その空間その場所だからこそできる暮らし

すっかり秋の雰囲気になりましたね。ふと外の景色を眺めると、空が高くなり、木々から緑が抜けていっていることに気づきました。このマンションに住んでから5年ほど経ちましたが、家族が増え、少々手狭な感じは出てきましたが、自分たちらしい暮らしを営むことができているのではないかと思います。DIYリノベーションなので、スペック的には不十分ではありますが、この話の続きはまた別の機会に。


同じマンションの方のお知り合いの方が度々見学に来られます(参考になっているのどうかは分かりませんが)。数分間のお話なので、あまり深い話までできないのですが、以前の間取りや他の居住者さんの間取りと大幅に変えたこともあり、印象を随分と変えることができるということに気付いていかれているような気がします。


マンションを買った当時のお話をします。


私が建築に興味を持った最初のきっかけは、部屋の模様替えというありふれたものなのですが、いつの日からか「自分の趣味、好きなもので構成された部屋」というものから興味が薄れていきました。建築を学んだことが大きな要因ではあると思いますが、自分のより良い暮らしができる間取りは一つではないということに気付いたと言ってもいいかも知れません。自分の思考は、自分の唯一無二の好きな家を作るということではなく、その場所によって暮らしをポジティブに変えて、その都度、豊かな暮らし方をしていきたい考えに変わっていきました。用意されたデザインに合わせて、自分の暮らしを犠牲にして空間ありきの生活に変えるつもりは毛頭ないのですが、空間に身を委ねたり、暮らしに合わせてデザインを変えたりするという、デザイナーと住まい手としての思考回路の往復が、自分の中では重要なポイントになっています。


このマンションを紹介された時、購入するかどうかの気持ちは半々くらいでした。設計者、デザイナーの観点からすれば、メゾネットの間取りで広瀬川や街並みを眺められるという、デザインするにはうってつけの物件だったので即決してもよかったのですが、一度図面化して自分たちの暮らしを落とし込んでみるという作業をしました。プランはほぼワンルームの間取りになっているのですが、寝室が丸見えということもあり、少し抵抗感を持たれる方も多いです。ただ、このマンションに住むのであれば、プライバシーを優先して向こう側に続いていく景色を失ってまで壁を建てるくらいなら、違うところに住んだ方がいいなと思っていました。一応、プライバシーを考慮して簡易的に仕切られるようにガラスの框戸を設置していますが、そもそも見られたくない方々が奥まで入ってくることもないので、来客があっても戸は開けっ放しで生活しています。空間的な魅力を活かし、その上で自分たちの暮らしを犠牲にせず、新たな自分の豊かな暮らし方を机上で発見できた時に、この物件を購入しようと妻と一緒に決断しました。


家を作るというのは、おそらく人生で一度、あっても二度あるかどうかの一大イベントですので、自分のこだわりを表現していくことも家づくりの楽しみであると思います。ただ、あまりそれに固執せず、先に述べたように、その場所や環境、空間の特性を活かして住まいかたを変えてもいいと思うのです。「住めば都」と言うと誤解を招きますが、ここに住むならどうやって住もうか?という思考になってみると、今までの自分の暮らしとは違う豊かさを発見できるのはないでしょうか。そして、その暮らしがもっと豊かになる可能性を引き出すために、建築や空間デザインの力が必要だと考えています。


空間の心地良さを活かしながら自分たちの豊かな暮らしを創造すること。

それも家づくりの一つの方法だと、デザイナーとして設計し、自ら暮らしていて思うことです。