自宅があるマンションには、毎年ツバメがやってきて子育てをしていきます。10日程前に生まれた雛は瞬く間に大きくなって、ぴょこっと顔を出しながら静かに親の帰りを待っている様子がとても愛らしく、息子たち二人の送り出しの時の癒しの風景になっています。
6月に入り、昨年から進めていた塩竈市認可保育園の計画が詳細に動き始めました。今回の設計は、以前サラリーマン時代に小規模保育園の改修と増築を担当したクライアントからオファーをいただき携わらせていただいています。

↑わだつみ保育園増築園舎
山や森、島へ子どもたちと出かけ、自然とのふれあいを大切にした保育を実践している保育所で、増築園舎の設計では、庭を囲むように増築園舎を計画し、テラスとの一体感が感じられるようなデザインを試みました。準防火地域ということで、外壁や軒裏に防火性能が必要になる地域でしたが、延焼のラインをかわすことで木を表し、構造的な垂木と登梁と同じ高さに化粧の垂木をデザインすることで、外と連続するような空間を試みました。押入れの戸はスリット仕様として、天井のデザインとの調和、押入れ内に換気扇を計画することで室内の空気と押入れの湿気を排出するという機能性も考慮したデザインになります。計画する新しい園もまた、仕様は少し違いますが、「園庭とのつながりを大切にすること」を目指して計画しています。

↑初期のボリューム模型
クライアントへのヒアリングと、敷地の周辺環境、保育所という用途から考えられること、コストのこと、いろんな思考を巡らせながら初期の段階からこのコの字型の平面計画が浮かんでいました。未満児(0〜2歳)と以上児(3~5歳児)の保育室、事務室、厨房、このあたりが保育園における大枠のエリアになります。建築に就寝の用途があるものは、特殊建築物(不特定多数の利用がある建築物)の中でも耐火基準の要求が厳しく、児童福祉施設の場合は、2階に保育室を計画すると準耐火建築物、2以上の階段等を設ける必要があります。また、認定こども園では耐火建築物への適合が求められます。これらの法的な基準も考慮して、保育室を1階に計画し、事務室等のスタッフの室を2階に設けるプログラムになります。
建物は大きく南棟(未満児)、北棟(以上児)、遊戯棟の3つのボリュームで構成されており、中央に遊戯棟を配置したコの児型の平面計画となっています。南棟には事務室を隣接させ未満児への対応がしやすい計画、北棟には厨房を配置し食育などの活動へ展開させます。遊戯棟は南棟と北棟、保育室に囲まれた西側の園庭、地域に開いた東側の園庭をつなぐ建物の中心となるような場所です。


現在は、工事に向けて詳細の図面を作成中。どんな現場でも、現場合わせや現場での変更は付き物ですが、防水性能や、取り合いの処理が難しい部分に関しては設計図書としてしっかりまとめておくと、監理する側も作る側も情報を共有できます。たくさん図面があることは重要ではなく、おさえるべきポイントを絵に起こして、事前に確認しておくために図面が必要なのです。設計=事前確認と言っても良いほど、設計は把握しておかなければいけない要素がたくさんあります。作り手の腕に任せてライブ感のある作り方も楽しいのですが、やはり細部まで目の行き届いた建築を作るためには、ある程度図面の量が増えていきますし、その作業をおろそかにすると現場での管理が大変になるので、気になる部分は全て図面を描くようにしています。図面を描くと、どこか難しいかがわかるようになることも大変意味があることだと思います。

設計図は作り手に送る手紙。作るために必要な情報が書かれていること、作る順番を考慮したディテールになっていること、そして、見やすいこと、美しいことを意識して、手紙に思いを込めます。