建具のデザインは、設計にとってかなり重要な要素です。
建具を開けたときに綺麗に見えるようにするのか、閉めている時のことを考えるのかによって、
その作り方も変わってきます。引き残しがないのか、あるのか。
素材は木なのか、壁と同じ塗装なのか、枠はあるのか、枠の厚みはいくつなのか、
建築の中で手で触れるところになりますから、一つ一つの寸法や素材感を
他の部分よりも細かく指定して作ることが多いです。
自邸の設計では、一つのテーマとして「家具のように馴染む建築部材」ということを考えていました。
写真1枚目は、洗面所に入る引き戸になりますが、
リビングからよく見える位置にあるため、インテリアと馴染む木製の手かけにしました。
材料は余ったナラのフローリングを建具屋さんに加工してもらいました。
通常ですと、ステンレスなどの金属製の掘り込み引き手にすることが多いのですが、
建具の素材ともマッチする素朴なデザインにしました。
鍵などが必要な場合は、また全然違うデザインを検討しなくてはいけません。
2枚目の写真は、保育園の押入れの鍵です。
小さな増築工事ということもあり、同じ大学出身の真鍮作家の役野友美さんに依頼し、
オリジナルの差し込み式の鍵を制作してもらいました。
かなり特殊な事例にはなりますが、室内の照明と素材を合わせています。
最近では建具自体を制作することもあまりなく、建材メーカーの建具が採用されます。
設計としても、既製品の建具を使うことはとても「楽」に設計できますし、
工場生産されたものは精度も高く、狂いも少なく、メリットが多いように思います。
全てをオリジナルで作ることはなかなか難しい時のほうが多いのですが、
その部屋や空間に合わせて、小さな部材、何気ない部分にも気を利かせて、
空間や暮らしに馴染むディテールを試みています。