木材への着色について

今回のコラムは、木材に対する塗装についての記事です。

工事が進んでいる石巻の住宅リノベーションで既存を含む木部に塗装を行う予定なのですが、いくつか塗装を購入してサンプルを作りながら模索しています。昔は家の中に囲炉裏があり、経年変化と相まって黒色をおびていき、時間の経過を感じさせる深い味わいになっていきます。本来であれば、その暮らしと共に木も変化していくという考えをベースとしてクリアで仕上げることが多いのですが、以前から木への着色には興味があり実験を行なっています。


昨年竣工した塩竈のわだつみ保育園さんは、内部外部とも木をふんだんに使っていますが、外部は屋久島地杉を使用し、ウッドロングエコという木材防護保持剤を塗布しています。


ウッドロングエコ

ハーブや樹皮などを原料として水に溶いて使用するのですが、塗った直後は薄い緑、時間の経過と共にナチュラルにくすんだような色合いになっていきます。エコハウスやナチュラルな建物を支持されている方にとても人気のある保護剤という認識をしています。一度塗布すると再塗装が要らずリーズナブルな材料です。外部用の保護剤になるのですが、エイジングしたような風合いで、これを内部へ塗布することで、インテリアとして可能性を模索したいと個人的に考えています。この実験はまた後日。

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「木に色をつける」=「木そのものの風合いを消す」という意識が働き、木部のほとんどはクリアで仕上げることが多いのが実情です。実際、木自体の密度の濃い部分と薄い部分で塗装の吸い込みが異なり、塗装しても綺麗に仕上がらないということもクリアで仕上げる要因になっていると思います。シナベニヤという綺麗な肌色をしている建材がありますが、着色が悪く、オイルステインなどの木目を生かす塗装との相性が良くありません。塗ってみないとわからないというリスクもあり、木部への着色は敬遠されがちです。わだつみ保育園さんの内部には杉をふんだんに使用しており、園のコンセプトからしても、木の表情をそのまま生かすことが良いという判断でしたので、全て蜜蝋ワックスで仕上げました。


一方で、クリア塗装を基本とすると濃い色のフローリングは高価なブラックウォルナットなどを使う、突板を張った積層フローリングを使う、もしくはカラーフロアや長尺シートといったもの使うという選択肢になる傾向があり、「無垢を使いたい」設計者にとって悩ましい問題になっています。この問題を塗布剤によって解決できないかというのが最近の私の興味です。


以前山形で設計を行なっていた時、全ての住宅で杉のフローリングを採用していました。日本の7割弱が森林ということで地場の木材を積極的に使用するというコンセプトがあり、堅木よりも熱伝導率が低く素足で歩いても冷たさを感じないということ、また設計経験を重ねると杉フローリングの価格的なメリットが非常に大きいなと感じています。ただ、一つ弱点として杉のフローリングはどうしても赤身と白身が混ざり濃淡が激しいところ、節あり材を使用すると床がうるさい印象となったり、若干和風の印象となってしまうという特性があります。杉のフローリングを個人的には肯定しており、地場のものを使うことや価格的なメリット、熱伝導率で優れている点などのメリットがあるにも関わらず、インテリアの要素として敬遠されがちな状態をなんとか解決できればいいなと考えています。


今模索しているサンプルを少しご紹介。

杉のカットサンプルに塗装を試しています。上から①無塗装、②柿渋塗2~3回塗り(白身材)、③柿渋塗り(赤身材)、④色付きの蜜蝋ワックス、最後の⑤が今回最も可能性を感じている塗装です。この塗装は市販で売っているものではなく、松煙墨という真っ黒い粉と弁柄という朱色の粉をミックスし柿渋で溶いたオリジナルのものです。刷毛で塗布した後ウエスで拭き取って仕上げています。④と比べるとノリが良く木目も生きています。




こちらは栗のフローリング、上が色付きの蜜蝋ワックス、下がオリジナルの塗装。杉と栗の2種類しかまだ施していませんが、樹種の違いで吸い込みにムラが出るということはなさそうです。松煙と弁柄の配合を変えて程よい濃さに調整していく感じかと思います。











杉と栗の着色を比較してみると、良いのか悪いのか、どちらが杉か栗かわからないくらいかと思います。もしかしたら、色味の要素を解決できれば、全てのフローリングは色々な面でメリットがある杉材で良いと言えるかも知れません。木そのものの風合いを生かすクリア仕上げか、樹種を問わず好みの色合いに調整できる着色仕上げか。木の外壁にウッドロングエコを使用し、結果的に本来の木の色から少し異なる色に変えていることを肯定するのであれば、木に着色すること自体がそこまで悪いことではないように思えてきます。基本的にはクリア仕上げ=木そのものの風合いを生かすスタンスでいながらも、善悪をつけるということではなく、あくまでもデザインやインテリアの幅を広げるものとして着色仕上げの可能性を今後広げていきたいと思います。




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