先週末、桃の花の開花を見計らって、昨年竣工した実家の桃小屋(Momo hut)の撮影を再度していただきました。天気も良く、開花の状況も最高で、ほっと一安心しました。
Momo hutを設計するにあたり、特に注力した点は屋根の形状です。変則的な寄棟の形状としているのは、小屋という簡素な建物に変化をつけたかった、雨風しのげる屋根と壁があれば成立してしまうような、建物の中で最もデザインを必要としない建物の価値観を変えたかった、そんな思いがありました。
それと合わせて、普段の生活の動線となる南側のファサードと、父が農作業を行う北側のファサードを統一したいというねらいもありました。
建物には玄関や居間、道路に対して表向きな部分と、水回り、給湯器や室外機といった設備を配置する裏側(あまり見せたくない部分)が発生してしまいがちです。Momo hutは照明やコンセントといったわずかな電気設備だけなので目立つ設備機器はないのですが、裏の畑は父にとって日頃の活動の場所であり、北側のファサードを裏側のような(表を優先した結果の末にできた)デザインにしたくありませんでした。「表も裏もない建物」そんな考えからこのMomo hutの形状が生まれました。
西側の急勾配な屋根面は作りやすい形状ではないので、施工者からは「外壁にしてはダメですか?」という相談もありました。合理的に考えれば、もちろん外壁(垂直面)にした方がはるかに作りやすいと思います。それでも、西側に勾配をつけたことで、旗竿敷地側の圧迫感も軽減され、合理性の塊のような小屋というものに愛らしいフォルムを持たせられたように思います。