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やまつみ保育園

塩竈市/保育所/木造2階建

PURPOSE OF DESIGN

設計趣旨

「やまつみ保育園」は、0歳児から5歳児まで、約60名のこどもたちを預かる民設民営の保育園である。塩竈市内にある小規模保育園「わだつみ保育園」の姉妹園で、暮らしを楽しむことをスローガンに、山に登り、時には島へ、塩竈を舞台に自然の中で過ごすことや外遊びを中心とした保育を実践している園に相応しい建築を目指した。

 


未満児に加えて、以上児が加わることになるやまつみ保育園では、未満児と以上児の活動量の違いに配慮しながら、こどもたちがどこからでも外に駆けだしていけるような外部との関係を意識したデザイン、また、将来的にこども園への移行も想定されていることもあり、広い敷地を活かして保育室を全て1階に計画した平面的な構成を主としている。コの字型の平面形状は、南側の未満児棟、北側の以上児棟、その2つをつなぐ遊戯棟によって構成されている。敷地境界線に対して素直にアウトラインを描き、未満児棟が外側に15°振れた形は西側の山々に対して開放性を帯びた「開かれた囲い」を作り出している。また、開かれた囲いは未満児と以上児を棲み分けするバッファーと異年齢同士の交流を育むコミュニティスペースとしての機能を同時に担っている。

 

内部空間は、近い2つの年齢をグルーピングし、一体空間として屋根勾配成りの天井の高い保育室と、保育室間には手洗室やトイレなどの水回りの機能を挟み込んでいる。空間のボリュームと仕上げ材の変化によって、空間の抜け感を​感じさせながら、素材を変えた低い空間によって「分節された空間の繋げ方」を試みている。保育室から手洗室への建具はほとんど開けた状態で使用することが想定されており、保育室側の建具の引き込み部分はあえて水回り空間と同じ杉板張りとすることで、水回りに対する間口を視覚的に広げていることと、白い保育室に対して建具と共にインテリアとしての効果を持たせている。大人が手を伸ばせば届いてしまうほど低く抑えた内庭側からは、まるで平屋のような佇まいとして感じられる一方で、外側、特に遊戯室の園庭側のポーチに関しては急勾配のスリット天井がダイナミックなファサードを作り、その2面性を内部空間ではボリュームと仕上材の変化で表現している。​​

やまつみ保育園はコンセプチュアルな造形ではあるものの、こどもたちのアクティビティや保育としての機能を素直に敷地に落とし込んでいった末に生み出された建築である。どこにいてもお互いの様子をなんとなく感じることができる。みんなと遊んだり、中でゆっくりしたり、大人たちとこどもたちが居場所を自由に選択して、それぞれの楽しい時間を過ごして欲しいと願う。

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