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MOMO hut

福島県桑折町/収穫桃選別小屋

PURPOSE OF DESIGN

設計趣旨

福島県桑折町は、明治維新後に養蚕業として栄え、現在では桃の産地として阿武隈川沿い一体に桃畑が広がっている。元々の小屋は先代が仲間達でDIYして作った建築で構造的な強度が担保されておらず、老朽化が進んでいることもあり、解体して桃の選別作業や農機具を保管するための小屋を新たに計画したプロジェクトである。

この建築をデザインするためには、まず敷地内に複数ある建築との隣棟延焼を整理する必要があった。既存建物に延焼のおそれのある部分を新たに発生させないために、500㎡以内のグルーピングを行い、既存建物への影響を最小限にする作業が机上で行われている。近接する土蔵との間には外壁間中心線があり、新しい建築にも延焼のおそれのある部分が発生しているが、外壁を延焼のおそれのある範囲外に計画することで半屋外空間と屋内空間の外壁を自由に選定できるようにした。居室がなく、採光や換気、排煙といった建築基準法の縛りはほとんどなかったが、なるべく照明を使わないように半透明のポリカーボネート製の波板を使い内部への採光を確保している。屋内側からは作業スペースの人の動きがぼやけて映り、外の気配が感じられるようになっている。

桃の選別作業を行う半屋外空間に雨が吹き込まないよう、軒先の高さは必要最小限の高さに抑え、梁と垂木をはね出すことで軒の出を確保した結果、変則的な寄棟形状の屋根が生まれた。軒がほとんど出ていない西側は旗竿敷地の通路が面しているが、西面も屋根として計画することで準防火性能が求められる外壁を極力少なくし、建材コストを抑えつつ西側隣地への圧迫感を軽減している。小屋としての合理性があり廉価な材料を使用しながらも、法的制限を読み解き屋根形状や壁の透明度の工夫によってデザインした建築である。

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