RE:HOUSE-S
宮城県石巻市/戸建住宅/リノベーション
PURPOSE OF DESIGN
設計趣旨
はじめに、私は「和モダンを得意とする建築家ではない」ということを先に伝えておきたいと思う。
築40年程度が経過した家は、屋根や外壁の劣化が散見され、断熱性能が乏しく、全面的な修繕を必要とする状態であった。それでもなお、内部に使われている太い化粧の柱、欅の梁、格天井など、時間が経過することでより深みを増している素材を活かしながら、次の世代の新しい住まいをデザインしたいと考えた。
まず必要な工事として、劣化部の修繕や断熱性能といった品質を確保させる必要があった。雨漏りや侵食が進んだ屋根は全面葺き替えの上、天井断熱を敷設した。外壁は既存の上から外張り断熱とし外壁を新設させると共に全てのサッシをペアガラスサッシに交換している。床は大引下地を全て撤去新設した上で新たに床断熱を施し、耐腐食性能や断熱性能を向上させた。水回り設備も機器を含めて全て配管から更新している。ほとんどの撤去作業を大工を中心に人の手で行いながら、歪みや傾きの癖を考慮し仕上げていく改修工事は、まさに職人の汗と技術の賜物によって築かれていることに気づく。
予算の大部分を劣化部の修繕に当てざるを得ない状況の中で、意匠や内装仕上げについては暮らしの中心となるLDKとその他の室でメリハリをつけたデザインを試みている。縁側・客間・仏間を仕切っていた襖や障子は撤去し、三間続きのLDKとして大胆に洋風の間取りに変更した。和風住宅の設えの醍醐味でもある欄間は残すことも考えたが、格天井を見せ、空間の広がりを感じさせるために開口部として撤去した。以前の床の間の場所には台所を設け、洋風の作りとしながらも簾張りのタイルや無垢の木のオーダーキッチン、左官仕上げの壁、フローリングを栗材とすることで既存の素材と調和が取れるようにデザインしている。その他の室は杉のフローリングとクロスの壁・天井の組み合わせとし、比較的に安価な材料で構成しながらも細部の納まりに気を配ることで野暮ったさを消したシンプルな空間とした。
冒頭の繰り返しになるが、私は和モダン専門の建築家ではない。空間の伸びや広がりを感じるデザインとすること、空間の広がりを活かす素材の見極めと使う場所をデザインすること、空間の広がりや素材の質を高める洗練されたディテールをデザインすることを、スタイルを問わず実践しているのみである。どんなスタイルの住宅であったとしても、デザインとしての客観性を常に持ち、住まい手の暮らしも滲み出るような空間デザインを提案したい。